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Fasciaの評価と治療 解剖・動作・エコーで導くFasciaリリースの基本と臨床 第2版 ハイドロリリースのすべて

  • ページ数 : 352頁
  • 書籍発行日 : 2021年7月
  • 電子版発売日 : 2021年9月1日
7,700
(税込)
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商品情報

内容

【痛み治療の革命】ファシア(fascia)の好評&定番書の改訂により,ハイドロリリースの完全版誕生!総数721点の図表とWEB動画!「初学者の安全・確実な実践」「ベテランの応用力向上」「他科・多職種連携」を促す!

解剖学・動作分析・エコー技術を基にfasciaハイドロリリースを解説した初版はこの分野の定番書となった.今回,新たなエビデンス&臨床実践に基づき改訂.fasciaの基礎と臨床について,圧倒的な情報の質と量で一冊に集約.特に「手技」について大幅加筆され,難易度を示しつつ部位別に網羅.また,「fascia理解のために特化した動画・カラー解剖図・表・エコー写真」は総数400点を超える.痛みに向き合う全ての臨床家の診療スキルが向上する.

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序文

第2版 序文

fasciaの概念とハイドロリリースの登場は,西洋医学にパラダイムシフトをもたらしました.これは,西洋医学と東洋医学・民間療法を含めた多分野の知識・経験を有機的につなげ,さらに局所と全体の精密かつ俯瞰的な理解を導いています.本書は,局所治療を学ぶだけの書籍ではありません.fasciaやハイドロリリースの命名から現在に至る経緯や思いを伝え,先人からの知恵と技術,そして臨床への姿勢を紡ぎ,総合的な疼痛診療の実践へと導く指南書です.

2017年に発刊された本書の初版は,当時のMPS研究会のメンバーを中心に執筆・編集され,「エコーガイド下Fasciaリリース」の知名度を国内外に広げつつ,fasciaの研究を活性化させました.MPS研究会は2018年に,一般社団法人日本整形内科学研究会Japanese Non-surgical Orthopedics Society(JNOS)へと名称を変更し,活発に研究支援,技術の発展と継承,ウェブ・セミナーの開催,多職種連携を基礎とする教育活動などを展開しています.

2018年6月には,国際疾病分類が30年ぶりに改訂され第11回改訂版(ICD- 11)となり,基本構造物にfasciaが追加され,この臓器に対しての注目が高まりました.さらに,11月にはThe Fascia Research Society主催の第5回国際Fascia研究学術大会もドイツ・ベルリンで開催されました.世界中から数百名の医療関係者が集まるfascia に関する最大の学術大会において,JNOS理事・今北英高先生(畿央大学大学院健康科学研究科教授)の「Influence of Adhesion-Related Fascial Gliding Restrictions on Dermal and Articular Movement」がThe Best Basic Science Abstract Awardを受賞しました.

2019年3月には,第124回日本解剖学会総会・全国学術集会で初となる「fasciaのシンポジウム」がJNOS会員らによって開催され,fasciaに係る現状と課題について日本解剖学会へ提言いたしました.また,8月にはfascia研究の第一人者であるCarla Stecco先生(パドバ大学人体解剖学・運動科学教授)による講演会をJNOSで開催しました.そして,エコーガイド下fasciaリリースを直接披露したところ,fasciaの成書である「Fascia」の改訂第2版に執筆依頼を受けることができました.2020年には,JNOS第3回学術集会とともに第1回日本ファシア会議を開催し,日本におけるfascia研究を先導しています.

エコーガイド下fasciaリリースの手技自体は,注射手技であるハイドロリリース,鍼治療,徒手療法,物理療法,運動療法,そして時に手術を含みます.外国では,fasciaの評価治療は徒手治療が中心に扱われていますが,日本では多様な治療手技が多診療科・多職種により展開されています.対象疾患・病態に関しても,頸肩部・肘部・手指・背部・腰殿部・鼠径部・股関節部・膝部・足部など従来の運動器疾患に加えて,頭部・顔面部・歯・顎関節部・創部のほか,炎症性疾患・神経内科疾患に合併する病態への活用が広がっています.これら多領域を扱ううえで,今北英高先生と小幡英章先生(埼玉医科大学総合医療センター麻酔科教授)に,fasciaの機能解剖や疼痛発生機序などの基礎的な部分について執筆いただきました.全身を評価するという観点では,診断学の基礎,自律神経の症候学・治療学について小林只先生(弘前大学医学部附属病院総合診療部学内講師・JNOS学術局長)に執筆いただきました.具体的な手技などについては,本書第1版に比べて大幅に加筆しました.加えて,運動器疾患に限らない多様な臨床領域における症例を提示しました.患者の治療には,発痛源の局所治療だけではなく,その悪化因子への評価・介入が欠かせません.その観点では,問診技術・認知行動療法,生活指導・サポートについて,総合診療医の並木宏文先生(公立久米島病院副院長)・平野貴大先生(弘前大学大学院医学研究科総合診療医学講座)にも,その技術を紹介いただきました.西洋医学と東洋医学の架け橋としての経穴・経絡とfasciaの関係については,須田万勢先生(諏訪中央病院リウマチ・膠原病内科医長)と鍼灸師兼理学療法士である銭田良博先生(株式会社ゼニタ代表取締役社長)に執筆いただきました.近年,外科領域においてもfasciaは,取り除くべき邪魔な組織ではなく,低侵襲手術を革新的に発展させる術式にとっては愛護的に扱うべき最重要組織として注目されてきました.

本書においても,川島清隆先生(熊谷総合病院泌尿器科医長)と洞口敬先生(B&Jクリニックお茶の水院長)に,手術操作におけるfasciaの取り扱いについて執筆いただきました.歯科領域においても,fasciaに注目する歯科医である佐野公永先生(佐野歯科医院院長)に貴重な助言をいただきました.また,多くの執筆協力者の方々の尽力なければ本書は執筆しえませんでした.このように,第2版である本書は,整形外科医・スポーツ医,麻酔科医・ペインクリニシャン,総合診療医,膠原病内科医,漢方医,歯科医,泌尿器科医などの医師,理学療法士・鍼灸師などのメディカルスタッフが,協働して執筆しました.

今回の編集は,前回に引き続き,小林只先生と並木宏文先生を中心に行われました.小林只先生は,臨床,教育,研究・開発,執筆など多忙の中で多くの時間を本書作成に割いていただいて大変感謝しています.前回と同様,本書の理論的な大黒柱で,言葉の定義・論議,基礎医学と臨床技術の架橋,外科医らの感性を言語化する情報整理を担いました.さらに最近は,著作権などの知的資産管理,ウェビナーにおける通信環境・利用規約の整備にも尽力いただき,その技能の幅広さと深さに頭が下がります.並木宏文先生は,地域医療で局所治療から生活サポートまで,それこそ総合的に患者も地域もケアする総合診療医であり,理解が難しい散乱した原案を,平易な表現や理解しやすい構成へ解きほぐし,執筆状況を管理し,各執筆者への適切な指示とサポートを担いました.いつも冷静な判断は,とても心強く感じます.

編集補佐として,鍼灸師の黒沢理人先生(トリガーポイント治療院院長),当院理学療法士の鈴木茂樹先生と浅賀亮哉先生は,私の執筆補佐の他に解剖イラストを作成していただきました.fasciaに注目した解剖図はほとんど存在しなく,我々が表現したい内容に合わせた多くのオリジナルイラストを提案していただきました.また,業務時間外の写真・動画撮影を手伝ってくださった当院看護師の大谷桂子様,鍼灸師の堀米秀法先生にも感謝申し上げます.そして,本書の発刊まで辛抱強く助言をくださった文光堂編集企画部 中村晴彦様,八幡晃司様をはじめ,すべての関係者に心より御礼申し上げます.

新しい知識が増えるほど,新しい視点が加わるほど,新しい治療部位や技術が見つかります.その結果として,症状の改善が思わしくなかった患者が,治っていくこと,喜んでくれることは,治療者にとって至上の喜びです.一方で,ハイドロリリースを含むfasciaリリースは,決して万能ではありません.従来の治療技術と有機的に組み合わせ,科学として,その限界を提示しつつ,適応となる病態や患者を明示していくプロセスを提示するために,本書では「このまま治療継続してはいけない場合」,「治療がうまくいかない場合に次どうするか?」も記載しました.本書が,すべての治療者の糧になれば幸いです.


2021年5月 編者を代表して

医療法人Fascia研究会 木村ペインクリニック 木村裕明

目次

1 fascia(ファシア)とは

 ①fasciaの歴史・定義の変遷─実態・認識・言葉の狭間で

 [column]雲とfasciaの類似性

 ②fasciaは西洋医学と東洋医学の架け橋

 ③fasciaの解剖生理

 [column]Dr. Jean-Claude Guimberteauとfascia

2 fasciaの病態

 ①fasciaと疼痛学

 [column]fasciaの発痛源は「神経」か?

 ②fasciaと画像評価

 [column]エコー技術の発展とfasciaの病態解明

 ③ファシア疼痛症候群(FPS)の提唱

 ④fasciaの病態に関わる代表的な用語(癒着,柔軟性など)

 ⑤癒着のGrade分類

3 fasciaから再考する各種病態

 ①診断とは何か? 病名と診断名の再考

 [column]不定愁訴とは? 原因不明とは?

 ②関節の病態

 [column]病名の再区分─thumb pain syndrome

 ③炎症性疾患との関係

 ④末梢神経の病態

 ⑤血管の病態(冷え症含む)

 ⑥fasciaと自律神経症状

 ⑦局所と中枢の治療戦略

4 エコーガイド下fasciaリリースとは

 ①エコーガイド下 fasciaリリースの技術開発,命名の歴史的経緯

 ②fasciaリリースの種類と適応

 [column]末梢神経内リリース

 ③エコーガイド下ハイドロリリースとは?

 [column]ハイドロリリースという言葉が生まれた背景

 ④hydroreleaseとhydrodissectionおよびブロックの違い

5 fasciaリリース評価と治療概論

 ①さまざまなfasciaリリース(注射,鍼,徒手など)の方法とその組み合わせ方

 [column]針・鍼の先端の形状と組織侵襲性

 [column]鍼は本当に神経や血管を避けるのか?

 [column]注射療法+徒手療法(passive manipulation with hydrorelease)

 ②注射手技と効果判定の全体像

 ③注射の治療効果判定

 [column]リリースで悪化する場合(圧痛による治療部位選定のピットフォール)

6 治療部位・発痛源の評価

 ①fasciaリリースのための診察の流れ

 [column]fascia治療に関する適切な用語は?

 ②触診─触診方法のコツ

 [column]医師が鍼を使う意義

 ③触診─触診の学習方法

 [column]エラストグラフィを活用したエコーガイド下触診教育

 ④動作分析と可動域評価

 [column]pROMの全身評価の方法:real anatomy train

 ⑤pROMとnerve tension test

 [column]エコーを用いた坐骨神経の滑走評価nerve gliding test

 ⑥fascia治療におけるエコーの活用法

 ⑦多様な関連痛マップ(dermatome,myotome,fasciatome,angiosome,venosome,osteotome)

7 エコーガイド下fasciaハイドロリリースの方法

 ①穿刺および注射針の操作技術─注射針・シリンジ・薬液の選択

 [column]fasciaハイドロリリースにおけるステロイド薬の適応

 ②fasciaハイドロリリースに伴う合併症

 ③安全で確実に注射するための工夫と学び方

 ④安全確実なfasciaハイドロリリースのための教え方(気胸を克服する)

8 エコーガイド下fasciaハイドロリリース(US FHR)の実践

 ①エコーガイド下fasciaハイドロリリースの学習法

 ②エコーガイド下fasciaハイドロリリースの難易度一覧

A 頸 部

 ①頭半棘筋/大後頭神経/下頭斜筋(ランクA)

 ②中斜角筋/後斜角筋/第1肋骨(ランクC)

 ③胸鎖乳突筋裏(C2〜3 レベル)(ランクB)

 ④C8神経根周囲の fascia(ランクC)

 ⑤側頭筋/外側翼突筋(ランクC)

 ⑥C1/2の黄色靱帯・背側硬膜複合体(ligamentum flavum/dura complex: LFD)(ランクC)

B 肩関節

 ①肩峰下滑液包と三角筋下滑液包(ランクA)

 ②烏口上腕靱帯(ランクA)

 ③三角筋筋内腱(ランクA)

 ④小円筋/上腕三頭筋(長頭)/腋窩神経,下後方関節包複合体(ランクC)

C 上肢帯

 ①僧帽筋/棘上筋(ランクA)

 ②棘下筋(横走線維/斜走線維)(ランクA)

 ③腋窩動脈周囲のfascia(腋窩鞘)(ランクC)

D 上 肢

 ①橈骨神経周囲のfascia(上腕遠位部)(ランクB)

 ②尺骨神経周囲のfascia(Struthers腱弓)(ランクB)

 ③オズボーンバンド(ランクB)

 ④長短橈側手根伸筋・総指伸筋/回外筋(ランクA)

 ⑤手関節部の伸筋支帯(ランクB)

 ⑥手関節部の屈筋支帯(ランクB)

 ⑦正中神経(束間神経上膜)(ランクC)

E 体 幹

 ①胸腰筋膜(ランクA)

 ②腰部多裂筋(ランクA)

 ③腰椎横突起腹側(腰方形筋付着部)(ランクA)

 ④腰椎椎間関節包(ランクB)

 ⑤術後創部痛(ランクB)

F 下肢帯

 ①中殿筋/小殿筋/腸骨(ランク A)および中殿筋/小殿筋/股関節包(ランクA)

  1.中殿筋/小殿筋/腸骨

  2.中殿筋/小殿筋/股関節包

 ②梨状筋(ランクB)

 ③S1後仙骨孔(ランクC)

 ④坐骨神経(ランクC)

G 下 肢

 ①鵞足/内側側副靱帯(ランクA)

 ②伏在神経周囲のfascia(膝関節周囲)(ランクB)

 ③半腱様筋/半膜様筋(ランクA)

 ④膝窩動脈周囲のfascia(ランクC)

 ⑤総腓骨神経周囲のfascia(ランクB)

 ⑥足関節部の上伸筋支帯(ランクB)

 ⑦足根洞(ランクA)

9 症例提示─fasciaハイドロリリースの実践が進む分野

 ①症例1 整形外科医の腰痛

 ②症例2 若年女性の上肢痛の原因は「顎関節」

 ③症例3 歯科領域への応用(新しい非歯原性歯痛分類の提案)

 [column]顔面痛に対するfasciaハイドロリリース

 ④症例4 脳卒中後遺症ではなかった右上肢のしびれ感

 [column]神経疾患とファシア疼痛症候群(FPS)の合併

 ⑤症例5 創部痛(大動脈弁置換術のための開胸術後)

 [column]腹壁へのハイドロリリース

 ⑥症例6 スポーツ選手の筋腱断裂後疼痛

 ⑦症例7 左肘窩部の採血後疼痛

 ⑧症例8 交通事故後のむち打ち症(外傷性頸部症候群)

 ⑨症例9 前胸部不快感と過換気発作を繰り返す若年女性

 ⑩症例10 膠原病(炎症性疾患)に合併するファシア疼痛症候群(FPS)

 [column]リンパ節炎後のリンパ節リリース

 ⑪症例11 脳出血後の頭痛・めまい(fasciaがつなぐ東洋医学と西洋医学)

10 悪化因子への対応─整形内科的生活指導

 ・生活指導の現状と課題

 ・運動器疼痛に対する整形内科的生活指導のプロセス

 ・事実の確認方法

 ・個人への介入方法

 ・集団への介入方法

11 fasciaに注視した手術─認識と手技の変遷

 ・創部と痛み・癒着の関係

 ・創部の治療

 ・手術手技とfascia

 ・手術領域において「膜」や「膜様構造」と認識されてきたfascia

 ・“膜”や“膜様構造”はfasciaの1つの表現形にすぎない

 ・fasciaに対する認識の転換―内視鏡による拡大近接画像が見せた「生きている立体的網目状構造」

 ・総論:fasciaを意識した手術手技(腹部・骨盤部を例に)

 ・各論:fasciaの認識と手術手技の関係(腹部・骨盤部を例に)―fasciaを温存するか,しないか

 ・fasciaを意識した手術は合併症を減らす

 ・fasciaを意識した手術の未来

12 初学者のためのQ&A集

 Q1 どのように診察を始めればよい?

 Q2 結局,痛いところに注射をすればよい?

 Q3 リリースで悪化する病態はあるの?

 Q4 注射実施時の感染予防対策は?

 Q5 プローブの血液汚染はどうすればよい?

 Q6 注射後は,注射した液体を手などで広げるの?

 Q7 よくある治療中の患者の反応は?

 Q8 注射後の重だるさや痛み(リバウンド)はあるの?

 Q9 注射した液体はどれくらいで消えるの?

 Q10 薬液注入量のだいたいの目安は?

 Q11 針を骨に当てると骨表面上での合併症が起こる?

 Q12 古いエコー機器ではこの治療はできないの?

 Q13 治療に要する時間は,一人当たりおよそ何分くらい?

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書籍情報

  • ISBN:9784830627491
  • ページ数:352頁
  • 書籍発行日:2021年7月
  • 電子版発売日:2021年9月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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