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実践 BCG流病院経営~バリューベース・ヘルスケア時代の病院経営
商品情報
内容
世界的経営コンサルティングファーム BCGによる待望の新刊。
さまざまな医療機関への経営改善支援の経験を基に、医療の質と生産性をともに高めるための考え方と実践的手法について解説します。経営層と現場が一体となった経営改善活動の推進に向け明日から取り組める打ち手が盛り込まれています。
序文
はじめに
稀代の経営学者であるピーター・ドラッカーは,未来を知る方法は2 つあると著書で語っている。1 つは,自分で創ること。成功してきた人,成功してきた企業は,全て自らの未来を自分たちの手でデザインし,切り開いてきた。もう1 つは,すでに起こったことの帰結をみることである。これを彼は,「すでに起こった未来」と名付けている。
ドラッカーの考え方にならって,前著『BCG 流病院経営戦略 ─ DPC 時代の医療機関経営』のなかで,筆者らは「すでに起こった未来」の観察を通じていくつかの未来予測をしている。2008 年時点でわが国の医療費はGDP の8.5%ではあったが,人口の急速な高齢化に伴って早晩10%を超えること,消費税を10%に上げるだけでは急増する医療費の財源としては十分ではないこと,そして,診療報酬改定等を通じて医療機関の経営はますます厳しくなることである。残念ながらというべきだろうか,その全てが2020年の現在では正しかったことが証明されている。
前著の出版当時,筆者らは医療機関へのコンサルティングを始めて間もなかったが,この間に病院経営者の意識に大きな変化を感じるようになった。当時は筆者らが属するボストン コンサルティング グループ(BCG)のような外資系経営コンサルティング会社に経営改善支援を依頼する医療機関は珍しかったのだが,現在では当たり前のことになりつつある。はじめは,独立行政法人化して独立採算が求められるようになった地域の中核病院からのご相談が多かったのだが,今では大学病院や地方自治体が所有する公立病院など公的色彩を帯びた大型病院まで,幅広くご相談をいただけるようになった。「すでに起こった未来」が,多くの医療機関経営者にとって,「今そこにある現実」として認識されるようになってきたのだろう。
この間,実にさまざまな医療機関に対して,新病院建設のビジョン作りから地域の医療ニーズならびに競合状況を踏まえた診療科体制の見直し,さらには短期的な収益改善に至るまで,数多くのプロジェクトのお手伝いをさせていただいた。しかし,地域やテーマ,公立・私立の違いにかかわらず,ご相談いただいた医療機関で共通してみられた課題が「経営と現場の意識の乖離」だ。理事長や病院長,事務局長をはじめとする経営層は,独立採算か否かを問わず,医療サービス提供の持続性を担保するには健全な収益性を確保することが重要だと痛いほど認識されている。国や地方自治体,大学本体等から直接・間接的に補てんされてきた資金が先細りになり,従来のような経営では立ち行かなくなってきているからだ。一方で,病院現場の収支や効率に対する意識はどうだろうか。医師,看護師,その他の医療従事者,事務方といった職種間の壁が厚く,定められた業務を間違いなくこなすことには優れている一方,病院全体としての効率性や収益に対する意識は必ずしも高くないのが実情だろう。したがって,経営層が収支改善や効率向上の策を打ち出しても,笛吹けども踊らず,志半ばにして経営改善努力が挫折する例が後を絶たない。折しも,新型コロナウイルス感染症の影響で病院収益が低迷するなか,経営改善は待ったなしである。
本書は,このような現実に鑑みて,病院経営の健全化に焦点を当てながらも,現場の協働を促すことを大きなテーマの1 つとしている。すでに病院経営に携わられている理事長や病院長,事務局長はもちろんのこと,看護師長や技師長など現場のリーダーの方々をも念頭において,明日からすぐに取り組める内容にこだわったつもりである。また,医療機関を保有しながらも,どのように改革すべきか頭を悩ませている地方自治体や大学本部のリーダーの方々にも,現場の実態を理解するために読んでいただきたいと考えている。本書を契機として,日本中の医療機関で各職種が連携し,経営層と現場が一体となった経営改善活動が進むことを期待してやまない。
末筆になるが,本書を執筆するにあたっては,実に多くの皆さまにお世話になった。執筆者を代表して心よりお礼を申し上げたい。筆者らの医療機関へのコンサルティングにアドバイスをいただき,本書にも寄稿くださった千葉大学医学部附属病院 副病院長の井上 貴裕先生。本書執筆に向けて常に背中を押していただき,アイデアを膨らませていただいた前厚生労働省医政局長でBCG シニアアドバイザーの武田 俊彦さん。前著に引き続いて本書の企画を実現していただいたエルゼビア・ジャパン株式会社の布川 治社長,同社コンテンツオペレーション部の飯塚 真一さん,森 美那子さん,コンテンツ&ソリューション開発部の土屋 博子さん。本書原稿の元になった連載記事を企画していただいた株式会社ミクスの沼田 佳之代表取締役編集長。筆者らの執筆が一向に進まないのに,見捨てずに最後までつきあってくれたBCG チーフ・エディターの満喜 とも子さん。一旦は止まりかけた企画を,機関車のように強力にドライブしてくれたBCG 卒業生の佐野 元子さん。そして,プロジェクトで日本国中の病院を飛び回って汗をかき,いつも新しい発見をもたらしてくれるBCG の早川 叶さん,山崎 路子さん,森 裕菜さんをはじめとする病院チームの仲間たちにも,この場を借りて感謝の言葉を述べさせてもらいたい。
2020 年7 月 東京にて
執筆者代表 植草 徹也
目次
第 1 章 わが国の病院経営を巡る新たな現実
第 2 章 VBHC が医療と病院経営を救う
第 3 章 病院経営改革のアキレス腱
第 4 章 まずは即効性ある打ち手で収益力を高め,次に構造改革に着手する
第 5 章 即効性ある収支向上策とは
第 6 章 VBHC に基づく病院改革 1:
2025 年医療提供体制改革に向け事業モデルで「強み」を描け
第 7 章 VBHC に基づく病院改革 2:
地域の医療機関・介護施設とのネットワークを築け
第 8 章 VBHC に基づく病院改革 3:
業務フロー改革で病院版 ERP を目指せ
第 9 章 VBHC に基づく病院改革 4:
現場から経営まで一気通貫の指標を導入せよ
第 10 章 質の高い医療の継続的な提供に向けて
第 11 章 バリューベース時代の病院経営が製薬企業,医療機器企業に与える影響
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書籍情報
- ISBN:9784860346676
- ページ数:170頁
- 書籍発行日:2020年7月
- 電子版発売日:2021年1月29日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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