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- 前線医療の処置マニュアル
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内容
序文
序文
2015年の安全保障関連法案(安保法)の改正に伴い、その是非について活発な議論がなされている。しかし、その議論は安保法改正の是非を問うことに終始し、活動する自衛隊員の安全安心に直結する医療問題が置き去りにされている。これまで自衛隊は安保法改正以前から安全な活動と称して海外でPKO活動を行っているが、安全神話の幻想に埋没し、万が一の医療体制すら論じられていない。想定外の想定を行い対処することこそが現代の危機管理であり、想定外のことが起こったからと許される時代ではない。危機対処の基本原則は「最悪を想定し最良の結果を目指す」ことであり、これは医療の世界にも通じる基本原則である。
安倍晋三総理のいうように「血を流してこそ同盟」というなら、その血を止めるのは、我々医療職の務めである。幸いに我が国は第二次世界大戦以降、戦争経験がなく平和であった。これは何よりも代え難いことであるが、一方、戦傷医療に関してはあまりにも無力である。本来はこの目的は防衛医科大学校にあったはずであろうが、残念ながら、現状でその目的を果たしているとは言い難い。また、自己完結型の自衛隊が医療以外に関してはその能力をいかんなく発揮しているのは自他共に認めるところであるが、しかし、医療に関しては臨床的経験や知識が乏しく、実際の戦傷医療に対応できるのか、との疑問が残る。故意に人を傷つける戦場という環境下での医療行為は、医療に関する考え方も異なっており、民間が代用できるものでもなく、自衛隊医療体制の根幹をなす部分でもある。
また、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、安全安心な東京を考える上ではテロ対策は必須である。テロは損傷行為自体においては形態を変えた戦争であり、危険の潜む現場活動は民間の活動の延長線上にはなく、前線救護活動の経験や知識・技術が求められる局面である。
2015年4月22日から防衛省により「自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」が開始され、ようやく戦傷医療の第一歩を歩み出したところである。国を守る自衛隊員の活動を医療的側面から支えることこそ喫緊の課題であり、本書が戦場における彼らの生命、機能を守るための道標として活用されることを望む。
2016年11月11日
内閣官房参与/東京都保健医療公社 副理事長
佐々木 勝
目次
1章 戦傷医学とTCCC
1. 戦傷傷病者治療戦略(TCCC)
1. 戦場における治療戦略システム
2. 米国におけるTCCCの普及
3. TCCCの目標と治療原則
4. TCCCにおける前線医療
2. 戦傷医学の基本
1. 平時の救急医療と戦傷医療の違い
2. 戦死・戦傷分析
3. 戦傷の疫学
4. 戦傷医学・医療の方向性
2章 前線医療:CUF・TFC・TECの実践
1. 砲火下の医療(CUF)
1. CUFの基本的行動
2. CUFにおける主な外傷
3. CUFにおける止血
4. CUFにおける気道確保
5. CUFにおける頸椎保護
2. 戦術的野外医療(TFC)① ─基本処置:MARCH─
1. M:大量出血
2. A:気道
3. R:呼吸
4. C:循環(輸液)
5. H:低血圧、低酸素症、頭部外傷、低体温
3. 戦術的野外医療(TFC)② ─その他の外傷処置─
1. 眼外傷
2. モニタリングと外傷の再評価
3. 疼痛管理
4. 抗生剤
5. 戦場における心肺蘇生術(CPR)
6. 敵兵の治療
4. 戦術的後送医療(TEC)
1. 気道確保
2. 呼吸
3. 出血
4. 静脈路確保
5. トラネキサム酸(TXA)
6. 頭部外傷
7. 輸液蘇生
8. 低体温予防
9. 穿通性眼外傷
10. モニタリングと生体力学
11. 疼痛管理
12. 抗生剤
13. 熱傷
14. ショックパンツ(pneumatic antishock garment: PASG)
15. 心肺蘇生
16. 敵兵の治療
17. 記録
Column
ゼロカジュアリティ
防衛省コンバットメディカルコントロール
経口腔粘膜フェンタニルの使用について
付録① Echelonの治療システム
付録② TCCCの基本と要点
付録③ 各種資器材と処置法
付録④ 参考文献
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書籍情報
- ISBN:9784880027692
- ページ数:0頁
- 書籍発行日:2017年1月
- 電子版発売日:2020年5月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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