Quality Indicator 2020 [医療の質]を測り改善する

  • ページ数 : 236頁
  • 書籍発行日 : 2020年12月
  • 電子版発売日 : 2021年2月17日
3,300
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商品情報

内容

聖路加国際病院の16年間にわたる診療の質指標(Quality Indicator:QI)の経年変化、その間に行われた改善の試みがこの一冊に!!
病院で提供される「医療の質」を表すQuality Indicator(QI)。近年、国レベルでの変化・発展が続いており、厚生労働省は、全国の病院を視野にQIの測定・質改善を促すための委託事業に着手しています。!
本書は、QIの測定・公表の先駆者たる聖路加国際病院における2004年から2019年までの16年間にわたるQIの経年変化、その間に行われた改善の試みを記した書籍の最新版です。「医療の質」改善を目指す病院にとって手引きとなる一冊です。

序文

序文

聖路加国際病院における2004年から2019年までの16年間にわたる診療の質指標(Quality Indicator:QI)の経年変化、その間に行われた改善の試みを記した『Quality Indicator2020』をお届けします。

2004年から2017年までの14年間のデータを記載した『Quality Indicator 2018』を2018年秋に出版後、翌年の『Quality Indicator 2019』を出版できず、幻となってしまいました。その原因は、本書のためのデータ抽出が、当院におけるコンピュータシステムの入れ替え作業の時期に重なってしまったためであります。私としては、途切れることなく毎年出版できればと考えていましたが、システム入れ替えの業務があまりにも膨大で、通常の業務をある程度絞らなければ、診療にも悪影響が及ぶ可能性が出てきたため、残念ながら、出版を諦めざるをえませんでした。

QIに関しては、最近も国レベルでの変化・発展が続いています。厚生労働省は、2010年度から毎年2~3の病院団体に補助金を出してQIの測定と公開を促す事業を行ってきていて、2018年度まで続けられました。新たな動きとして、2019年度には、病院団体を超えて、全国の病院を視野にQIの測定・質改善を促すための委託事業に着手しました。日本医療機能評価機構がこの事業を受託しましたので、今後は、8,000を超える全ての病院を対象に、何らかの働きかけがなされるものと期待しています。何年か後には、わが国のすべての病院で提供される医療の質が測定・公開され、改善していることを世界に向かって発信できることを願っています。

当院におけるQIプロジェクトは、いくつかの場面で期待以上の有用性を示しています。2019年11月に認証を受けた米国のANCC(The American Nurses Credentialing Center)によるMagnet Recognitionもその一つです。この認証を受けることで、いわゆるマグネット・ホスピタルになれるのですが、その認証過程で膨大なデータの提出が求められました。しかし、そのかなりの部分は、当院ではすでに測定・公開しているQIのうち看護部門が主として関わるものでした。また、2020年3月に発表された米国のNewsweek誌による病院ランキングで、ありがたいことに、当院が国内1位、世界16位に位置づけられました。そのランク付けに用いられた評価項目と重みづけも発表されていますが、病院が提供する医療の質の評価もその評価項目に入っていて、そのことが当院の高評価につながったものと思われます。

最後に、医療はもちろん社会全体―人類世界のあり様まで―に甚大な影響をもたらしつつある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について一言。本序文の執筆時のわが国では、COVID-19の第2波が治まるようで治まりきらない状況がだらだらと続いています。その一方で、国内外の人の動きを活発化させ、経済を立て直す方向に国としては舵を切りました。極端な言い方をすると、「ウイルスで死ぬ可能性」と「経済活動の縮小に伴う飢えと落胆で死ぬ可能性」のどちらをより強く避ける(忌避する)のか、ネガティブ指標を用いた決断の話でもあります。生存年数が伸びる、より健康になる、収入が増える等のポジティブ指標を用いた決断とは異なり、客観的なデータを示すことができたとしても、個人個人の主観的バイアスは非常に大きく、おそらく万人が同意するような決断は不可能と思われます。

国としての方針はどうであれ、国民一人ひとりの行動―マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンスの確保等―の総計が社会全体の感染率であることを意識して、日々の生活を送りたいものです。


2020年10月

聖路加国際病院 院長
福井次矢

目次

第1章 医療の質とEBM、Quality Indicator 福井 次矢

第2章 聖路加国際病院におけるQI 測定・公表の経緯・手順と「改善」 嶋田 元

第3章 Quality Indicator 選定基準、質改善と患者安全のための方略 嶋田 元

第4章 国際的な看護の質評価(Magnet Recognition®) 五十嵐 由衣/門田 美和子

第5章 患者経験・患者報告アウトカム結果による質改善 嶋田 元/金児 玉青

St.Luke’s コラム 1  福井 次矢

第6章 病院全体

01 病床利用率、平均在院日数 利根川 崇

02 救急車受入台数、救急車・ホットラインの応需率 大谷 典生

03 紹介率・逆紹介率 木村 美保

04 医業利益率 髙田 宏昭

05 意見箱投書中に占める感謝と苦情の割合 久保田 純子

06 死亡退院患者率 QI 委員会

07 剖検率 QI 委員会

08 研修医1 人あたりの指導医数、研修医1 人あたりの専門研修医数 福井 次矢

09 卒後臨床研修マッチング1 位希望者の募集人数に対する割合 福井 次矢

第7章 報告・記録

10 2 週間以内の退院サマリー完成率、48 時間以内の手術記録完成率 阿部 香代

11 検体検査の報告に要した平均時間 上原 由紀

第8章 看護

12 褥瘡発生率 近藤 玲加/黒木 ひろみ

13 褥瘡発生リスクの高い人に対する体圧分散寝具の使用率(処置実施率) 近藤 玲加/黒木 ひろみ

14 高齢者(せん妄ハイリスク患者)せん妄評価率・発症率 嶽肩 美和子/滝口 美重

15 転倒・転落発生率、転倒・転落による損傷発生率 笠井 愛/嶽肩 美和子

16 転倒・転落リスクアセスメント実施率、転倒・転落予防対策立案率、転倒・転落予防対策説明書発行率、転倒・転落リスク再アセスメント実施率 笠井 愛/嶽肩 美和子

17 身体拘束実施率 嶽肩 美和子/滝口 美重

第9章 検査・薬剤

18 ステロイド服薬患者の骨粗鬆症予防率 小澤 廣記

19 入院患者のうち薬剤管理指導を受けた者の割合 川名 賢一郎/後藤 一美

20 向精神薬を服薬中の外来患者の中で抗不安薬・睡眠導入薬・抗うつ薬・抗精神病薬を各2 種類以下、かつ、抗不安薬と睡眠導入薬の合計を3 種類以下に留めた割合 種本 陽子/池田 真人

21 免疫療法・化学療法により発症するB 型肝炎のHBV キャリア・既感染者スクリーニング率 森 信好

St.Luke’s コラム 2  福井 次矢

第10章 手術・処置

22 中心静脈カテーテル挿入術の重篤合併症発生率 笠井 愛/嶽肩 美和子

23 執刀開始1 時間以内に予防的抗菌薬投与を開始した割合 嶋田 元

24 ガイドラインに準拠して予防的抗菌薬が投与されている患者の割合 嶋田 元

25 非心臓手術における術後24 時間以内・心臓手術における術後48 時間以内に予防的抗菌薬投与が停止された割合 嶋田 元

26 無症候性細菌尿を有する患者のHoLEP 手術における、術前尿培養スクリーニングに基づいた適切な抗菌薬治療の施行率 京野 陽子

27 大腿骨近位部骨折患者の手術翌日離床達成率   真下 翔太

St.Luke’s コラム 3  福井 次矢

第11章 生活習慣

28 糖尿病患者の血糖コントロール(HbA1c) 能登 洋

29 高血圧患者の血圧測定率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

30 降圧薬服用患者の血圧コントロール率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

31 LDL コレステロールのコントロール 能登 洋

第12章 脳・神経

32 前方循環系主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞に対する早期血管内治療の割合 佐藤 慎祐

33 虚血性脳卒中患者における抗血栓薬退院時処方率 木村 哲也

34 心房細動・心房粗動を伴う虚血性脳卒中患者における抗凝固薬退院時処方率 木村 哲也

35 脳卒中患者におけるリハビリテーション実施率 木村 哲也

第13章 心血管

36 ST 上昇型急性心筋梗塞の患者で病院到着からPCI までの所要時間が90 分以内の患者の割合 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

37 左室機能が悪い急性心筋梗塞患者へのACE-I/ARB 退院時処方率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

38 急性心筋梗塞患者における病院到着前後24 時間以内のアスピリン処方率、急性心筋梗塞患者における病院到着後24 時間以内のβ-遮断薬処方率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

39 左室機能が悪い心不全入院患者へのACE-I/ARB 処方率・β-遮断薬処方率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

40 心不全入院患者における左室機能評価 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

41 心不全入院患者における退院後予約割合 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

42 PCI 後24 時間以内の院内死亡率 QI 委員会

43 急性心筋梗塞患者における退院時処方率(アスピリン、β-遮断薬、ACE-I/ARB、スタチン) 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

44 心不全患者における退院後の治療計画記載率 蟹江 崇芳/小宮山 伸之

第14章 感染管理

45 中心ライン関連血流感染(CLABSI)発生率 坂本 史衣

46 膀胱留置カテーテル関連尿路感染(CAUTI)発生率 坂本 史衣

47 人工呼吸器関連イベント(VAE)発生率 田村 富美子/坂本 史衣

48 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症発生率 坂本 史衣

49 クロストリディオイデス・ディフィシル トキシン陽性患者発生率 坂本 史衣

50 手指衛生実施率 坂本 史衣

51 手術部位感染(SSI)発生率 坂本 史衣

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書籍情報

  • ISBN:9784899964407
  • ページ数:236頁
  • 書籍発行日:2020年12月
  • 電子版発売日:2021年2月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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