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- 理学療法臨床診断学への志向~ARIMAの問題解決モデル
商品情報
内容
理学療法の対象者が有する問題の解決のヒントとなる多くの情報を分類・整理し,解決のための思考を円滑にする著者提案の“問題解決モデル”を用いて理学療法診断能力を高める1冊.対象者の“目標・問題点・治療プラン”がおもしろいように分かる新しい思考ツール.学内教育において理学療法診断能力を高める学習教材として用いることができ,臨床実習における理学療法診断の思考サポートとして活用することもできる.
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序文
まえがき
■理学療法診断の“考える技術”を提供する
この本は,理学療法学生と新人理学療法士の理学療法診断過程を支援することと,その能力を向上させる教材として企画したものです.これまで,理学療法診断における検査・測定の技術については多数のガイドやマニュアルが出版され,また養成施設においても多くの時間が割かれ教授されてきました.しかしその一方で,理学療法診断における思考方法(考える技術)についての教育は十分であったとはいいがたい状況にあると思います.このような現状を踏まえ,この本は理学療法診断の初心者に対して“考える技術”を提供することを目的としています.
これまで,理学療法の臨床思考についていくつかのモデルやツールが開発されてきました.仮説演繹法やパターン認識,臨床推論モデル,和島の臨床問題解決法などです.これらにより考える道筋あるいは順序が示されたことで,理学療法診断は無形のものから有形で可視的なものになりました.しかしながら,「学生は統合解釈ができない」という指摘は今日も続いています.これは思考の道筋や順序だけでは初心者は自らの思考を円滑にすることはできないということを裏付けているのでしょう.
■理学療法診断への思考を支援する“問題解決モデル”
これに対して,近年,思考のフレームワーク(枠組み)を与えようとするアプローチが始まっています.思考のフレームワークとは,その利用者にとって未知の事柄を理解しようとする際に,煩雑な情報を分類し,因果関係を考慮しながら整理することを促す“思考のお手本”のようなものです.このような取り組みの1つが内山の“症候障害学”だと思います.症候障害学は,動作分析という,これまでブラックボックスのように称されてきた認知作業に明確なフレームワークを与えたという点で理学療法診断を大きく進歩させ,また,理学療法診断を教育するという雲を掴むような営みに一点の光を見出させました.本書で提案する“問題解決モデル”もまた理学療法診断における思考をサポートしようとするフレームワークです.理学療法の対象者が有する問題解決のヒントとなる多くの情報を分類,整理し,その問題の解決策を講じるための思考を円滑にするフレームワークです.また一方では,人の生活機能障害の構造(原因-結果関係)をもとにモデルが作成されているため,分析を進める道筋あるいは順序も示しています.つまり,“問題解決モデル”は理学療法診断における手順と意思決定までの思考を支援することを試みています.また,問題解決モデルを用いて対象者の状態を表したものを,その症例の“問題解決構造”と呼び,これは作成者の
認知内容を外在化した概念地図であるため,教員や実習指導者は作成した学生の思考内容を手にとるように知ることができます.そのような意味から,このモデルは理学療法診断の教育にも用いることが可能です.したがって,学生や新人理学療法士の理学療法診断過程をサポートすることとその能力向上のための教材となることが,“問題解決モデル”の目的であり,この本の目的です.
■理学療法診断は対象者の問題解決における意思決定過程である
この本の構成は次のようになっています.理学療法診断は対象者の問題解決の過程における意思決定過程であるということを前提に,まず,1章では認知心理学における問題解決の思考モデルについて取り上げ,その思考モデルからみた理学療法における臨床問題構造についてあらためて捉えなおしました.そして2章では,そこから理学療法固有の問題構造を分析するための問題解決モデルを提案し,そのモデルを理学療法の臨床および教育という観点から点検を行いました.その後3章では,このモデルを用いた場合の理学療法診断の方法について提案し,さらに4章では,円滑な理学療法診断を促すために疾患別で典型的な問題解決構造を提案しました.また,この本の最後には,5章として理学療法診断能力の向上を目的に,演習問題としての症例とその症例の問題解決構造(解答例)を収録しました.この本の活用方法についていくつか提案すると,まず,①学内教育において理学療法診断能力を高める学習教材として用いることができます.そして,②臨床実習における理学療法診断の思考サポートとして活用することもできます.
■理学療法診断をCBL(症例基盤型学習)で学ぶ
5章に収録した演習問題を用いて理学療法診断の能力を高める学習方法について提案します.症例を用いて何かを学ぼうとする方法を症例基盤型学習(case based-learning :CBL)といいます.ここではCBLを用いた学習方法を紹介します.まず症例の情報を読みます.そして,記載されている情報でわからない言葉があれば,それを調べます.その後,問題解決モデルをもとに症例の問題解決構造を作成します.この際,例えば参加ユニットで躓(つまず)いたら,4章に疾患ごとの各ユニットの特徴を提示しましたので,当該疾患の“参加ユニットの特徴”を読んで参考にしてください.このように進めながら,まずは自分の力だけで,その症例の問題解決構造を完成させ,そして理学療法の目標,標的,介入プラン,制約条件について意思決定します.その後,解答例としてあげた症例の問題解決構造を見てください.自分が作成したものと異なる部分があれば,再度,4章の典型的問題解決構造や各ユニットの特徴を参考に再考してください.しかしながら,解答例としてあげた問題解決構造は,あくまでも解答“例”ですから,ぜひ,自分が意思決定した内容について教員や先輩理学療法士のフィードバックをもらうべきでしょう.また,この教材としての症例情報は,その一部を変更して用いることも可能です.例えば,病期や社会的情報,機能構造に関する情報を変えてCBLを行うことにより,より疾患別の理学療法のコアをマスターしやすくなります.
■情報を問題解決モデルにプロットして解を得る
次に臨床実習における思考をサポートする活用方法について提案します.実習で対象者を担当したら,3章で提案した理学療法診断の手順にそって,それを進めてみてください.対象者の問題を構造的に捉えることが可能となるでしょう.得た情報の因果関係を考えながら,それらを問題解決モデルに順次,プロットしていくと,理学療法の目標,標的(問題点),介入プラン(プログラム),制約条件(リスクや考慮点)について円滑に意思決定できるでしょう.この際,情報同士の“因果関係”は,1章にその大枠が,2章には理学療法の全体像として,そして4章には疾患別に提示してあるので,ぜひ参考にしてください.一方,従来の理学療法評価におけるデータ推進的な方法で集められた情報も,統合解釈の際に問題解決モデルにプロットしていくと意思決定が円滑となるでしょう.この従来の方法で情報を集める際は,4章の典型的問題解決構造を参考に検査項目を選択して検査・測定を行うと,症例の理解に最低限必要な情報を得ることができます.また,検査・測定に要する時間は節約され,何よりも対象者の負担が軽減されることでしょう.しかし,典型的問題解決構造はあくまでも参考程度にし,頼り過ぎないことが理学療法診断能力の向上につながると思います.
この本が学生や新人理学療法士の問題解決能力の向上の一助となり,さらには理学療法対象者の方々の福利に寄与できれば著者としてこの上ない喜びです.また一方では,理学療法熟達者の方々から忌憚のないご意見をいただき,理学療法における臨床思考モデルが将来的に確立されれば,なお望外の喜びです.
最後になりましたが,この本をまとめるにあたり多くの方々の支えがありました.私に理学療法教育のチャンスを与えていただきました故浅野目進氏,理学療法における臨床思考モデルの必要性を教えていただきました神戸大学大学院の嶋田智明先生,このモデルの開発に多くのヒントを与えていただいた学生諸君,そしてかつて学生であった諸君,原稿の作成にあたり多くのお手伝いをいただいた同僚の鈴木裕治,我妻浩二両氏に心から感謝申し上げます.
2010年3月
有馬慶美
目次
1章 問題解決の思考モデルと理学療法診断
1.臨床問題解決を支える思考モデル
1)理学療法士の使命
2)認知心理学における問題解決過程と問題解決の思考モデル
3)理学療法における問題の構造と問題解決
4)理学療法のための問題解決モデルの提案
2.思考モデルと理学療法診断
1)問題解決過程と理学療法診断
2)理学療法診断における思考モデルの必要性
2章 理学療法診断のための問題解決モデル
1.問題解決モデルの構成と構造
1)問題解決モデルの概観
2)問題解決ユニット
3)生活障害の構造とユニットの連鎖
2.問題解決モデル
1)基本構造
2)問題解決モデル
3.問題解決モデルの諸側面
1)概念地図法としての問題解決モデル
2)ICFと問題解決モデルの互換性
3)症候障害学と問題解決モデル
4)理学療法プロセスにおける問題解決モデル
5)対象疾患と問題解決モデル
6)病期と問題解決モデル
7)統合解釈と問題解決モデル
8)臨床実習指導と問題解決モデル
3章 問題解決モデルを用いた理学療法診断
1.理学療法診断の過程
1)理学療法診断とは
2)理学療法診断の過程
2.理学療法診断の実際
1)処方箋の入手と解釈
2)事前準備
3)参加ユニットの診断
4)身辺動作・IADLユニットの診断
5)基本動作ユニットの診断
6)機能・構造ユニットの診断
7)全ユニットの包括的な意思決定
4章 疾患別 問題解決構造
1.骨折
1)基本概念
2)骨折における問題解決構造の特徴
2.関節リウマチ
1)基本概念
2)関節リウマチにおける問題解決構造の特徴
3.脊髄損傷
1)基本概念
2)脊髄損傷における問題解決構造の特徴
4.下肢切断
1)基本概念
2)下肢切断における問題解決構造の特徴
5.脳卒中
1)基本概念
2)脳卒中における問題解決構造の特徴
6.パーキンソン病
1)基本概念
2)パーキンソン病における問題解決構造の特徴
7.脊髄小脳変性症
1)基本概念
2)脊髄小脳変性症における問題解決構造の特徴
8.慢性閉塞性肺疾患
1)基本概念
2)慢性閉塞性肺疾患における問題解決構造の特徴
9.変形性関節症
1)基本概念
2)変形性関節症における問題解決構造の特徴
10.末梢神経損傷
1)基本概念
2)末梢神経損傷における問題解決構造の特徴
5章 理学療法診断 演習問題
1.骨折
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
2.関節リウマチ
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
3.脊髄損傷
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
4.下肢切断
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
5.脳卒中
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
6.パーキンソン病
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
7.脊髄小脳変性症
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
8.慢性閉塞性肺疾患
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
9.変形性関節症
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
10.末梢神経損傷
1)症例
2)診断結果の参考例
3)問題解決構造の参考例
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書籍情報
- ISBN:9784830643835
- ページ数:154頁
- 書籍発行日:2010年4月
- 電子版発売日:2022年2月23日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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