高齢者診療の基本

  • ページ数 : 368頁
  • 書籍発行日 : 2022年8月
  • 電子版発売日 : 2022年8月10日
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商品情報

内容

高齢者を診る必要が生じたときのはじめの一冊

高齢者人口が増加の一途を辿るいま,領域や得意不得意に関わらず高齢者を診る機会は増え続けています.本書は,高齢者の病態を総合的に理解し,適切な診療を実践できる第一歩を踏み出すための基本知識や重要なポイントをまとめたハンドブックです.

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序文

序文

65歳以上の人口が社会全体の21%を超えた社会を超高齢化社会と呼ぶそうです.2017年10月1日の国勢調査では,日本の65歳以上の人口は27.7%と超高齢化社会に達していています.2025年には約30%に達すると推計されており,少子化も影響して小児科医の活躍の場が次第に減ってきていると感じている小児科医は少なくないと思います.

実際のところ,都市部では比較的若い小児科医が薄給で頑張っている施設が増えている印象があるという感想はしばしば耳にします.小児科の診療所も多く,小児患者だけを診ていては採算が合わないとの理由で「小児科・内科」を標榜するところもますます増えるものと思われます.また,様々な社会環境の変化から,親子受診や家族受診が可能な環境に対するニーズも増えてくると感じています.最近では,小児科専門医で子どもたちを集めて,そのお母さんたちに自由診療で美容サロンまがいのセールスをする施設もあります.正直言って,年をとると採用してもらえる病院小児科はかなりレアでもあります.

しかし,小児科医が「ついでに高齢者の内科疾患を診る」というのは,それほど簡単ではありません.小児は月齢や年齢が進むに従ってその特性が変化しますが,同様に高齢者は非高齢成人が単純に老化という機能的劣化をしただけの存在ではなく,個々の高齢者ごとに個別対応せざるを得ないことがたくさんあります.

私は,小児科医として働きはじめて3年目から,障害児医療から障害者医療,そして一般の成人や高齢者の診療にも職場の環境上の理由から携わるようになりました.その経験の上に立って,老年医学ないし高齢者診療についてこれまで学習してきたことをいくらかでもまとめてみたいと思いました.それが本書だというわけです.

高齢者診療にとって重要だと思うことを中心に記載したつもりですが,まだまだ未完成な部分が多々あり,改訂の余地はあると思います.それでも,これから高齢者診療をはじめようと考えておられる先生方のお役に立てるものと信じています.本書は高齢者総合診療という立場で書いていますが,疾患ごとに高齢者を振り分ける総合老人内科という意味ではなく,高齢者を総合的に診療しようという立場を重視して書いています.したがって,本書の対象読者は,研修医や内科,総合診療科の若手医師が主であり,加えて小児科医も対象に考えました.

ただし,小児科と意外と関係がある高齢者の話もコラムを中心に読み物として記載しています.案外お役にたつのではないかと考えている次第です.


2022年3月25日

橋本 浩

目次

総論編

第1章 高齢者の特徴

体温

呼吸

血圧

脈拍

高齢者診療に必要な診かた/考え方

第2章 症候

主要な症候

主要検査データ

栄養評価と栄養管理

嚥下困難および嚥下機能の評価方法

高齢者のサルコペニアとフレイルへの対策

疾患編

第1章 循環器疾患

心血管疾患の一次予防

高齢者の血圧

高齢者高血圧治療の基本パターン

食後低血圧や起立性低血圧,神経調節性失神とその治療

虚血性心疾患の一次予防

高齢者の心房細動

狭心症の管理

慢性心不全

血栓症とその治療

第2章 呼吸器疾患

慢性閉塞性肺疾患

気管支喘息

気管支拡張症・びまん性汎細気管支炎

間質性肺炎

特発性肺線維症の急性増悪と急性間質性肺炎

薬剤性肺障害

肺癌

悪性胸膜中皮腫

胸腺腫・胸腺癌

サルコイドーシス

塵肺

第3章 代謝性疾患

高齢者の肥満

脂質異常症

高尿酸血症・痛風

高齢者糖尿病

高齢者における主な甲状腺疾患

第4章 感染症

発熱と感染症

高齢者感染症の特徴

感染症治療の原則

呼吸器感染症

尿路感染症

消化器感染症

胆道感染症

皮膚軟部組織の感染と鑑別診断

中枢神経感染症

敗血症と菌血症

高齢者と新型コロナウイルス(COVID-19)感染症

第5章 精神・神経疾患

精神疾患

脳血管障害

  脳梗塞

  脳梗塞の治療

リハビリテーション

てんかん

認知症

  認知症をきたす大脳疾患の分類と診断の概要

  認知症と画像診断

  認知症治療薬(抗認知症薬)

  認知症の治療

認知症診療で知っておきたいこと

パーキンソン病

第6章 消化器疾患

萎縮性胃炎

自己免疫性胃炎(A型胃炎)

高齢者におけるヘリコバクター・ピロリ除菌

消化管腫瘍と内視鏡

急性腹症

胆道系疾患

消化管機能性疾患と漢方薬

  慢性便秘

  便秘と漢方薬

薬剤関連消化管障害

高齢者炎症性腸疾患の特徴

高齢者における消化管ステントの適応

抗血栓療法中における高齢者消化管出血への対応

第7章 腎疾患・泌尿器疾患

慢性腎臓病

腎代替療法

高齢者の排尿にかかわる問題

第8章 血液疾患

高齢者の貧血

骨髄異型性症候群

白血病

悪性リンパ腫

多発性骨髄腫と主な類縁疾患

高齢者のDIC

第9章 膠原病・自己免疫疾患

関節リウマチ

リウマチ性多発筋痛症

RS3PE症候群

シェーグレン症候群

巨細胞性動脈炎

結節性多発性動脈炎

ANCA関連血管炎

IgG4関連疾患

好酸球性筋膜炎(びまん性筋膜炎)

全身性強皮症

多発性筋炎/皮膚筋炎

第10章 運動器疾患

歩行障害と動作緩慢

骨粗鬆症と高齢者の骨折

転倒リスクの評価

骨粗鬆症の治療

運動器の痛み

疼痛の種類と治療薬

  疼痛に対するリハビリテーション

  トリガーポイント注射と神経ブロック

  手足のしびれ

第11章 感覚器疾患

高齢者の視力障害

高齢者の聴力障害

高齢者の耳鳴り

高齢者の嗅覚障害

老人性鼻漏

高齢者の味覚障害

第12章 皮膚疾患

皮膚の加齢性変化

高齢者に多い皮膚病変

デルマドローム

高齢者の下肢の皮膚所見

爪の変化

褥瘡

第13章 睡眠障害

睡眠と覚醒

睡眠障害のスクリーニング法

不眠症

睡眠呼吸障害

過眠症

その他の異常

応用編

第1章 高齢者に対する薬物療法

第2章 高齢者入院診療の基本

第3章 高齢者救急医療

第4章 高齢者リハビリテーション

第5章 高齢者在宅医療


索引

コラム目次

異常な呼吸様式

見た目と健康状態

中学生や高校生にもある突発性難聴

心原性失神の予測因子

ホルター心電図で得られる診断的意義のある所見とは

head-up tilt試験

出血の症候

認知症と心房細動

癌と心房細動

わさびを大量に食べたことが原因で“たこつぼ型心筋症”を発症した?

吸入ステロイドと肺癌あるいは糖尿病の関係性

欧州における脂質異常症ガイドラインの改訂

食べ物と血糖値の変化

小児の尿路感染症

輸入感染症は高齢者にもある─ジカウイルス感染症を例に

高齢者の新規入院時にPCR検査を全員に行うべきか?

抑うつ・不安・強迫症に対する漢方治療の概要

wake-up strokeと抗血栓療法

脳血管障害は小児にも起こり得る

トラゾドンについて

医師が忖度すべき相手とは?

鉄や亜鉛の欠乏と神経・精神症状

特発性食道粘膜下血腫

脳卒中における排尿自立支援の有用性

筋無症候性皮膚筋炎(CADM)

COVID-19(新型コロナウイルス)感染症と感覚障害

ジアノッティ病とジアノッティ症候群

糖尿病と睡眠

小児のポリファーマシー

愚かな忖度はやめなければならない

トラネキサム酸(TXA)で頭部外傷死亡が減少する

小児にとって少量でも致死的になり得る急性薬物中毒

施設訪問診療のTips

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書籍情報

  • ISBN:9784498059269
  • ページ数:368頁
  • 書籍発行日:2022年8月
  • 電子版発売日:2022年8月10日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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